残業代をめぐる判決

医師の労働環境の改善は、医療機関自体の経営上避けては通れないものであることをより実感を持って認識していただくために、この問題が社会的に表面化した例をご紹介していきましょう。
これも極最近の話なのですが、医師の定額年俸制において残業代込みでの換算が有効かどうかを争点として争われた訴訟において、「残業代の対象にあたる勤務時間を他の賃金対象とは判別できず、ゆえに残業代を年俸に含んで支払ったとはいえない」との判断が上告審判決で出された事例があります。
この最高裁の判断からは、労働環境に寄った区別なく労働基準法の規定に沿った時間外労働の支払いを厳格に求める姿勢が垣間見えてきます。そして、たとえそれが医療機関であったとしても、例外ではないという判断指針ことが今回の判例から明確になったのです。
これによって、これから先、日本国内すべての病院で、「医師の残業代をどのように扱うべきなのか」という課題を解決しなければならなくなったと言えるでしょう。最高裁判所の判決が下ってしまった以上、これまでの志と責任感に頼った医師特有の特殊な長時間労働を、(体への負担含め)だましだまし続けていくことは、その病院や医療業界の社会的信頼を損なうだけでなく、過労による医療ミスなど重大な過失に繋がる恐れがあり、それはリスクとしてあまりに大き過ぎます。
しかし一方で、当然のことながら、純利益がきちんと得られなければ、病院を維持していくことはできません。「適正に残業代を計上した結果、病院側が得られる診療報酬額が損益分岐点を下回ってしまった。」では、問題以前に病院経営そのものが揺らいでしまいます。
現状既に、これらの経営課題に苦しんでいる病院は少なくありません。とある独立行政法人の調査によると、医療機関の赤字割合はすでに上昇傾向にあり、一般の病院で半数未満ほど、療養型病院、精神科病院で4分の1ほどとなっているそうです。
これらのことからもわかるように人件費単価の高い医師の業務負担は、可能であれば単価負担の比較的少ないコ・メディカルへの移譲を進めるべきだと言えるでしょう。
しかし、旧来の業務構造では医師の業務は移譲自体が難しい。
だからこそ根本的でかつ複合的、抜本的な改革が必要なのです。
これから先の、病院経営はどうなっていくべきなのかをできるだけ早急に考えなければならないタイミングに来ています。

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